なぜ独特なにおいがする?日本人に多いワキガ(腋臭)の原因
ワキガは“汗臭さ”とは大きく違い、ツンと鼻につくようなにおいが特徴です。その原因は汗にありますが、実は体内から出たばかりの汗に、においはないのです。ではワキガの人の汗は、なぜ独特なにおいになるのでしょうか?
ワキガの原因
ワキガの主な原因は、アポクリン腺から出る汗にあります。汗そのものは無臭なのですが、アポクリン腺の汗に含まれる脂質やタンパク質、糖質、アンモニアなどの成分が皮膚表面に存在する常在菌により分解されることで、鼻につく独特のにおいが発生するのです。これに皮脂が混ざり合うと、においはさらに強くなります。
もうひとつの汗腺であるエクリン腺から出る汗は水と塩分でできているため無臭なのですが、ワキガ体質の場合は、これが蒸発する時にアポクリン腺から出る汗のにおいを一緒に拡散させてしまいます。そのため、身体全体がにおうように感じられてしまうのです。
さらにワキ毛は汗を留める役割をもつため、ワキの下の湿度が高まるとそこに溜まった汗に細菌が繁殖し、におい物質が増加してしまう場合もあります。
世界と日本で違うワキガに対する意識
ところで、世界にはどれぐらいワキガ体質の人がいるのでしょうか。
10人に1人(約10%)がワキガ体質の日本にくらべ、欧米では70~100%がワキガ体質と、かなり高い割合を占めます。(「ワキガ」ではなく「ワキガ体質」ですので、ご注意ください。)
少数派だからこそ、日本ではワキガが大きな悩みとなってしまいます。事実、多数派を占める欧米では、ワキガに悩む人はいないに等しいと言います。それでも、日本人の10人に1人はワキガ体質です。つまり約1千200万人がそうなのですから、「自分だけ」と悩まず、前向きに対策していきましょう。
日本人はにおい嫌い?
日本は、世界でも稀にみる清潔好きな国です。それは、毎日お風呂に入るという習慣からも分かります。他国では平均して1週間に1回程度と言いますから、その多さは群を抜いていると言えるでしょう。
また欧米ではシャワーで身体を清潔にはするものの、体臭は香水と組み合わせて魅力のひとつとして演出するそうです。日本人は、体臭はもちろんにおいそのものに嫌悪感を示すため、におい嫌いな国としても有名です。
このように日本と欧米ではにおいに対する考えに大きな違いがあり、それがワキガに対する考え方にも表れています。例えば治療ひとつをとっても、欧米ではワキガのにおいを「軽減」する方法が一般的なことに対し、日本は主に“においそのもの”を絶つアポクリン腺摘出手術を施します。
食の欧米化でワキガ体質の人が増えている
ワキガ体質が多い欧米と少ない日本。その違いは、食文化の影響が大きいと考えられます。肉類など高カロリー&高脂肪の食べ物には、皮脂腺やアポクリン腺を活発にする作用があります。
反対に穀物や野菜、魚にはビタミンをはじめポリフェノール、β-カロテンなどワキガ体質の改善に有効とされる栄養素が含まれています。これを見ても、野菜や魚中心の食生活を営んできた日本に対し、肉類中心の欧米にワキガ体質が多いことが理解できると思います。
しかし、野菜や魚中心の食生活から肉やファストフード中心のものに移行していくにつれ、日本人のワキガ体質も強くなっていると言われています。つまり食生活の欧米化が、体質も欧米人に似たものにしているというわけです。
ただし間違ってはいけないのは、「ワキガ体質の人が増えている」というわけではないということです。アポクリン腺の数は生まれた時に決まっているため、肉類中心の食事で今あるアポクリン腺が活発に働くことはあっても、なかったアポクリン腺が新しくできることはありません。
つまりワキガ体質は増えているのではなく、強くなっているのです。ワキガ体質の人は、お肉を食べる時は野菜も一緒にとるなど、日頃からバランスの良い食事を心掛けるようにしましょう。